バレンタインという異国の風習を耳にしてから、趙雲も馬超にそれがしたいと思い、関係ありそうな書と邸にある調理器具を広げたまではよかった。
武人である趙雲は単簡な炊事こそ出来はすれ、菓子作りなど手を出した事があるはずもない。そもそも、馬超は甘い物が得意だっただろうか。
趙雲は記憶を辿った。

三十日前の記憶

三日前の記憶

成都には南蛮の特産物が届くのだが、甘味の強いそのどれもを馬超は苦手としていた気がする。

街に出る

三日前の記憶を思い出す

脳裏に浮かぶ彼の笑みに疼いた己を趙雲は恨めしく思った。

街に出る

三十日前の記憶を思い出す

街へ出ようと寸での所で、趙雲は考えた。 大の男、しかも武人の、が菓子作りについて人に聞いて回ろうとするのは如何なものか。
常識的に考えて、と口をついて出てしまっては、詳しそうな身近な人間に聞くより他はない。あまり多くの人の手を煩わせてはならないだろう。どなたか一人に。
趙雲は二人の人物を思い浮かべた。

尚香殿に聞く

諸葛亮殿に聞く

女官との談笑を切り上げた孫尚香が手短に言った。
「私、凝った物は作れないわよ。簡単なやつでいいなら教えてあげるわ。馬超に渡すんでしょ。彼、あなたが作ったものなら何だって喜ぶと思うけど」
女官が顔を赤くして趙雲を二度見した。

作り方を教わる

諸葛亮殿に聞く

諸葛亮邸を尋ねると、邸の主が木箱を退けつつ趙雲に歩み寄った。
「教えて差し上げても構いませんが、少々変わった材料を手に入れましたのでそちらを使って頂く事が条件です。良い報告を期待していますよ」
趙雲は一抹の不安を覚えた。
ふと、邸の奥から甘く香ばしい匂いがすることに気づいた。

作り方を教わる

月英殿に聞く

「試作品ですがどうぞ」
味見を、と姿を見せた月英に薦められ器に乗ったチョコレートを口に含むとほろ苦く、しかしまずいわけではないむしろ美味だ。

作り方を教わる

他の人に聞く

趙雲は、手筈通りにチョコレートを作った。

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趙雲は、手筈通りにチョコレートを作った。

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趙雲は、手筈通りにチョコレートを作った。

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